小石川植物園                               
                                 2021・11・18(木) 参加者:8名+6名
   
   

新型コロナウイルス感染症が一段落した秋の一日、緑グループは4年半振りの観察会で小石川植物園へ出掛けて来ました。
今回はせたがや自然環境保全の会、文京区の植物同好会の方々がご一緒して下さって、
園内を案内していただきながら、興味深い植物のお話を伺うことも出来て、楽しく、充実した観察会となりました。

   

「小石川植物園」と通称される東京大学大学院理学系研究科付属植物園は、
徳川幕府が貞享元年(1684)に開いた「小石川薬園」に始まる日本最古、世界有数の歴史を持つ植物園の一つで、
161,588u(三宿の森の20倍)という広大な面積を持つ植物学の研究・教育施設です。

11時に植物園正門に集合し、正門近くに実を落としていたケンポナシ(三宿の森でも今夏、開花を初認)を試食した後、
関東地方の私達のフィールドでは見かけることのない珍しい植物が植えられた南面の低地からを観察を始めました。
園路を進みながら、実りの秋を迎えた植物たちの個性豊かな種子散布スタイルのお話などを伺いましたが、
「食べられません」という実まで「なめてみる」と視覚、触覚、臭覚だけでなく味覚パワー全開のメンバーもいました。



ヒゼンマユミ−ニシキギ科−


ハナヒョウタンボク−スイカズラ科−


オータムライラック−スイカズラ科−


シロヤブツバキ−ツバキ科−


オオモクセイ−モクセイ科−


グランサムツバキ−ツバキ科−


マツシマアザミ−キク科−


ヤマアイ−トウダイグサ科−


ラクウショウの気根−ヒノキ科−
気根を出すラクウショウの隣に植えられた常緑のメキシコラクウショウ(落羽松・・・)やカツラの林を見た後、
少し東へ戻り、太郎稲荷の先から台地を上り、薬園保存園近くのベンチで12時半から30分の昼食タイムをとりました。


   
柴田記念館と柴田桂太(1877−1949)顕彰レリーフ

午後は先ず、柴田記念館で開催中の「ツナミ プランツ 倉科光子展」(10月5日−12月26日)を鑑賞しました。
東京大学植物教室・柴田桂太教授の学士院恩賜賞賞金の寄付によって大正8年に建設された生理化学研究室は、
2005年に改修されて、現在は展示や講演に使われている植物園に残る最古の建物です。



「内海に群生するウミミドリ。荒れ野に繁茂するハマエンドウ。遠くの海岸から流れ着いたスナビキソウ。
津波の後の東北にはそんな植物が織りなす光景が無数に点在しました。
私は海岸で見た植物をtsunami plantsと名付け描き続けています。」
せたがやトラスト彩草会の元会員の倉科さんの3.11後の東北の海岸の植物画は深いメッセージを伝えていました。

昭和39年(1964)に英国物理学研究所所長から寄贈されたニュートン(1643−1727)生家の接ぎ木リンゴ、
植物園2代園長の三好教授が大正2年(1913)に分譲を申し出て、翌年、チェコから送られて来た
メンデル(1822−1884)が遺伝学の実験に用いたブドウの分株、
理学部植物学教室助手の平瀬作五郎が明治29年(1896)に採種した若い種子に精子を発見したイチョウなど
歴史を語る由緒ある保存木も見学しました。


  
旧養生所の井戸                             カゴノキ林           

町医者小川笙船の意見により、享保7年(1722)に貧困者のために作られた施療所、旧小石川養生所の井戸を見た後、
ニンジンボク、シロマツ、スズカケノキ、ユリノキ、ヌマミズキ、シマサルスベリ、カゴノキ、カリンなど
様々な樹木の特徴ある葉、樹皮、果実を観察しながら、大木の林の中を散策しました。




   
旧東京医学校本館                               日本庭園  

明治9年(1876)に建築され、昭和44年(1969)に本郷構内から移築された東京大学の現存最古の建物で、
国の重要文化財に指定されている旧東京医学校本館を背景にして集合写真を撮った後、
徳川5代将軍綱吉が幼少の頃住んでいた白山御殿の佇まいを残す日本庭園でひと休みしました。


   
ナンキンハゼ紅葉                            ソテツ           

3時頃、ナンキンハゼの見事な紅葉を見ながら出口へ向かいましたが、
正門近くまで戻ってからも、オオモクゲンジや明治29年頃(1896)に東京大学農科大学の池野成一郎助教授が
精子を見つけたゆかりのソテツなど、なおも観察を続ける様子が見られ、
天気予報がよい方に外れ、にわか雨に合うこともなく、観察会を堪能した充足感と共に3時45分に帰路につきました。

また観察会に自由に出掛けられる日常が戻ってくることを願いつつ!
 


ヌマミズキ−ヌマミズキ科−


ハゼノキ−ウルシ科−


オオモクゲンジ−ムクロジ科−


タカワラビ−タカワラビ科−


ソテツの実−ソテツ科−


オオモクゲンジの実−ムクロジ科−